2013年3月29日金曜日

「ニセコ観光局」についての町民意見交換会を開催します

ニセコの宝である自然資源や景観を保全し次代に継承すること。地域の価値をニセコブランドとして磨き上げて国内外からの誘致受入を進めること。 これらは、広域で取り組むことでより実効性を高めることができます。
倶知安町、ニセコ町などで構成する「ニセコ観光局プロジェクト検討会議」 では、こうした機能を担う組織として「ニセコ観光局」の検討を進めている ところです。
この度、この「ニセコ観光局」のあり方などについて、中間報告がまとま りましたので、次のとおり意見交換会を開催します。
事前申込は不要です。多くの皆様のご参加をお待ちしています。
 
 ■開催日時・場所
  (倶知安町会場)
  日時:4月5日(金)14時00分から 場所:倶知安町中小企業センター 
 (ニセコ町会場)
  日時:4月5日(金)18時30分から 場所:ニセコ町民センター
■内容  「ニセコ観光局」の検討に関する中間報告 ・意見交換
■主催   ニセコ観光局プロジェクト検討会議
    (倶知安町、ニセコ町、倶知安観光協会、ニセコリゾート観光協会、
    ニセコプロモーションボード)
<お問い合わせ先>
  倶知安町役場経済部商工観光課  電話:0136-56-8009
  ニセコ町役場商工観光課  電話:0136-44-2121

1−0−1.お知らせ


この度、ニセコ観光局設立に向けた検討内容を、両町の町民や関係事業者のみなさんと共有することはもちろん、ニセコに関心を持ち折々に訪れてくださっている町外の方々に対しても逐次情報をお伝えし、共にニセコの未来を考え、意見の交流を図る場の一つとして、このWEBサイトを開設することにしました。  

検討内容や中間報告は右欄のカテゴリーから選択できます。
また、記事一覧では投稿月別にタイトルが掲載されていますので、こちらからもご覧になれます。


なお、ご覧いただく資料は、まだ関係者の間で議論の途中段階にあるものです。今後の議論の推移の中で、変更される可能性もあります。ご覧いただいたみなさまからも様々なご意見をいただければ、今後の議論に反映していきたいと思います。

私たちのチャレンジにそれぞれのお立場から参加していただき、ニセコの未来を共に創り上げていくパートナーになっていただきたいと願っています。



1:「ニセコ観光局」のあらまし            1−1.なぜ「ニセコ観光局」が必要なのか?






※注:本文中の「ニセコ」は、倶知安町とニセコ町にまたがるリゾートエリアを
   中心とする広域的地域の範囲やブランドを示す表現であり、
   自治体名の「ニセコ町」とは異なります。



1)「ニセコのたから」自然資源を未来に引き継ぐため
 ニセコの多様な地域特性は、その自然条件の多様さに起因している側面が強い(前ページのフロー図を参照)。二つの国立公園・国定公園に属しあるいは接し、その恵みの形に応じて営んできた結果が、多様な自然資源と地域個性という「ニセコのたから」である。準都市計画や景観地区指定、あるいは水道水源保護条例などによって、その価値を守り継承するための仕組みづくりも始まっている。この取組は、行政だけではなく地域住民や地域で営業する事業者も共に担うことが実効性をもたらすので、地域のたからを保全継承するガバナンス(共治)が、官民一体の組織を目指す「ニセコ観光局」には必要である。

2)「ニセコのちから」観光産業を地域に循環させるため
 倶知安、ニセコ両町とも、ニセコ山系に広がるニセコリゾートエリアと市街地が別々の存立基盤を抱えたまま、互いに緊密な関係を結んでいるとは言い難い状況が、地域経済の実態においても住民の意識においても、今なお見られる。
 しかし、両町の観光産業が地域の他の産業全体にどのような影響を及ぼしているかを調査分析した報告書によると、両町とも観光産業の波及効果は、農業も含む全ての産業種・業種に及んでおり、その波及効果係数は1.4倍に及んでいる。「ニセコのちから」を端的に示すこの数値を裏付けるように、近年は、在住外国人ビジネスマンや長期滞在する外国人観光客の姿を市街地でも見かける機会が増えた。日常生活面での文化的確執も間間見られるが、国際的な交流の深化は、地域の発展を質量ともに支える大きな要因となる。「ニセコ観光局」は、リゾートエリアにおける国際的交流を市街地や農村部に循環させる使命を帯び、両町の産業と文化など地域総体の発展に寄与することも、大きな設立目的である。

※1:「観光産業の経済効果に関する調査報告書」平成18年/北海道経済産業局


3)「ニセコはひとつ」ブランドを世界にアピールするため
 ニセコアンヌプリの頂上を接点として4つのゲレンデスキー場は一体化しており(前ページの地図を参照)、スキーヤーは、文字通り「ニセコはひとつ」を実感している。しかし、今なお、ニセコの観光誘致も受入環境も情報提供も現地サービスも、長年指摘され続けてきたにもかかわらず、バラバラのままである。これまでは、地区ごとに地域特性が大きく異なっていることが、共同歩調を妨げる要因ともなっていたが、観光客の滞在期間が延びてきた昨今は、地域個性の多様性が選択の多様性としてニセコの大きな魅力となりつつある。この魅力を的確に発信できるのが、統一組織「ニセコ観光局」である。
 地域内外の誰もが、名実ともに「ニセコは一つ」となることを切望している。「ニセコ観光局」の使命は、ニセコをひとつのブランドとして国内外に展開することである。


1−2.ニセコ観光の現状と課題


 ニセコにおいては、これまでも折々に観光に関する現状と課題の調査分析がなされてきた。ここでは、その中の、ニセコの強み(S)や弱み(W)、地域内外からの好機(O)や脅威(T)などを区別して地域の特性を構造的に捉える「SWOT分析」から、特徴的な傾向をもとに、「ニセコ観光局」の検討に資する視点を整理した。

※2:「ニセコブランド構築に伴う調査分析報告書」NPB2008、『ニセコ町観光振興計画』ニセコ町2009

1)S(Strong)強み
  パウダースノーに代表される自然資源が豊富・・・ブランドとして展開
  立地条件の良さ・・・・・・・・・・・・・・・・市場における比較優位の位置取りとして展開
  多様な人材の豊富さ・・・・・・・・・・・・・・市場における比較優位の位置取りとして展開

2)W(Weakness)弱み
  地域資源の管理、ガバナンス(共治)※注が弱い・ 「ニセコ観光局」の中核的機能として強化
  マーケティング(誘致受入)の展開が脆弱・・・・対象細分化に基づく誘致受入機能の強化
  組織態勢がバラバラ・・・・・・・・・・・・・・「ニセコ観光局」に統合しワンストップ化
  観光産業と地域経済の関係が見えない・・・・・・地域経済全体への波及を積極的に誘導
  交通体系が貧弱・・・・・・・・・・・・・・・・エリア全体の循環交通網の整備
  季節の偏りが顕著・・・・・・・・・・・・・・・ブランド「フォーカラーズニセコ」として展開
  まちづくりの遅れ・・・・・・・・・・・・・・・両町のまちづくり全体への波及を積極的に誘導

3)0(Opportunity)機会
  世界市場がニセコに関心を寄せている・・・・・・対対象細分化に基づく誘致受入機能の強化
  地域の取組みが始まりつつある・・・・・・・・・「ニセコ観光局」創設への取組み

4)T(Threat)脅威
  地域資源の管理やガバナンス(共治)の弱さにより、リゾート開発の制御が効いていない
                       ・・・「ニセコ観光局」にガバナンス機能を組み込む
  経済不況と競争激化の圧迫が強まっている・・・・両町まちづくり全体への波及を積極的に誘導



※注:「ニセコ観光局」における「ガバナンス(共治)」とは:
 行政と住民が<統治−被統治>の縦の関係に固定され、行政だけが公共性を担う「ガバメント(統治)」と異なり、「ガバナンス(共治)」は、行政と住民が横の関係として共に公共性の担い手となる仕組みである。ここでは、行政が規制し民間が規制されるという縦の関係を固定するのではなく、官と民が横の関係の中で保全に向けた規制等に共に関与し、連携して総合調整を行う新しい公共の担い手となることを意味している。

1−3.「ニセコ観光局」に期待される望ましいあり方


1)地域の価値を守るガバナンス(共治)の推進母体
  ニセコ全体の価値を保全し次代に継承する機能を担う

  •  土地利用区分間の調整、環境と景観の保全、自然生態系や水源の保全、リゾート活動の安全確保を担う
  •  そのために、地域資源の保全に向けた利用規制と持続可能な資源活用が両立する成長管理政策を進める

2)多様な調整機能によるガバナンス(共治)機能の強化
  国や道、町による規制や許認可と関連事業者の事業計画との間で、合意形成を図る

  •  エリア全体に係る各種規制や利用に関する許認可等に関して、調整機能を発揮する
  •  規制と誘致受入活動の両立を図るために、重要な政策的判断を自律的に行う総合調整の仕組みをつくる

3)多様なニーズに対応する広域リゾート観光の推進
  ニセコに求められる多面的なニーズに、柔軟かつ複合的に対応する

  •  ニセコの多様な個性を有機的に繋ぎ発展するよう、両町の多面的な地域ニーズを組合せて進める
  •  広域的な計画を作成し、その実現に向けて、構成自治体や関係諸団体との調整や勧告など連携を深める

4)官民一体でニセコブランドを推進
  地域の価値をニセコブランドとして熟成させ、官民一体で誘致受入を進める

  •  地域の価値をニセコのブランドとして誘致宣伝し、リゾート観光客を受入れる中でブランド力を磨く
  •  官民が一体となった新しい公共として推進主体を成熟させ、構成員のノウハウを活かした活動を行う

5)地域全体への経済波及に貢献
  リゾートエリアから両町市街地など地域全体に経済の波及効果を誘導する

  •  リゾートエリア全体の経済循環をさらに拡大させ、市街地や農村部などへの経済波及効果を増大させる
  •  リゾート観光産業が地域産業全体に及ぼす高い波及効果を町民全体が実感し、文化交流へと発展させる
6)地域全体の意思を反映する民主的な仕組み
  ニセコエリア全体の意思を反映する民主的な仕組みにより事業を運営する

  •  地域の価値を守りより高度な付加価値を生む地域産業は、地域住民の民主的な合意形成に基づき支える
  •  自立的な第三者機関等の設置により、新しい公共主体による事業に関する外部評価的な仕組みをつくる


1−4.「ニセコ観光局」の全体像


1)これまでの検討によって整理された内容



2)未整理の課題   








1−5.「ニセコ観光局」におけるガバナンス(共治)の位置付け


1)「ニセコ観光局」の業務全体におけるガバナンス(共治)機能の位置づけ

 ニセコ観光局の中核的機能であるガバナンス(共治)の役割は、地域資源の持続性を確保しつつその範囲内で地域産業が安定的に継続できるよう、リゾート施設の過剰供給などを制御することであり、地域開発の成長管理が主たる目的となる。このようなガバナンス(共治)を基盤として、マーケティング(誘致受入)の対象を細分化して絞り込み、リゾート市場において競合相手に勝るニセコの比較優位の位置取りを訴求し、これらに見合った方向でニセコ全体の受入環境の質の向上を図るとともに、その過程や成果を広報・宣伝し地域内外で情報を共有することにより、ニセコのブランドを形成する。これらの成果をもとに誘致活動を行い、ブランドの熟成に結びつける。(右図)

2)ガバナンス(共治)の主な機能

①ニセコ全体のグランドデザイン(将来像)を描き、進行管理する機能
 ニセコ全体の将来像を示すグランドデザインは、リゾートとしての開発と規制の方向性に関する原則を示すものであり、地域の価値を守るガバナンス(共治)が依拠する根拠となるものである。これまでその必要性が強く指摘されながらも、行政側からの進展がなかった経緯を総括し、早急に構築する必要がある。

②土地利用規制における五区分相互の隙間や重複を調整する機能
 土地利用五区分(都市、農地、森林、自然公園、自然環境保全)の各個別規制法間の整合性を確保するため、別途、北海道で作成済みの土地利用基本計画に加えて、土地利用調整基本計画(市町村)が必要となっている。五区分相互の隙間(ギャップ)により生じている「白地」や「重複」を調整する機能は、リゾート開発を適切に制御するためには不可欠であるものの、個別規制法だけでは難しいので、総合的な調整機能が求められる。
 そこで、ニセコ観光局は、五区分の規制等を直接担うのではなく、広域エリア全体の実態を把握し、それらの不十分なところについての調整指針を示し、規制を直接担う関係機関と協議調整することが適切と思われる。手法や制度設計についての先進事例を参考にしつつ、ニセコとしての独自制度を創出する。また、水資源や環境の保全、景観配慮など、土地利用に関連する領域のガバナンス(共治)も必要不可欠である。

※3:「土地利用基本計画を作ろう!」国土交通省2010 / 「水資源保全地域に係る指定の区域及び地域別指針」ニセコ町HP
③市場機構を管理する、行政による総合調整機能
 リゾート形成においては、投資や運営の面で民間が主体となりつつも、リゾート開発の管理やビジネスの管理、不動産取引等に関する管理、人材育成の管理、そしてブランドの管理(ブランド形成)においては、行政が責任を持って関与し、民間と協力しながらリゾート市場の質と量を管理するガバナンス(共治)が不可欠となる。これまで、この側面への行政関与が不十分であった経緯を総括し、適切な責任ある総合調整機能が求められる。具体的には、次の分野と指針を検討したい。※4:北村倫『知的資産創造』2008
 ●リゾート開発の管理
  ・リゾートエリアにおける適切な開発戦略の誘導と、関連するまちづくり計画の策定
  ・開発、建築、景観、環境、資源活用などに関する指針づくりの検討
  ・循環交通網や通信など不十分なリゾートインフラ整備の誘導
  ・除雪やゴミ処理、防災や防犯など、生活環境面の指針づくりの検討
  • ビジネスの管理
  • ホテルやコンドミニアム等客室数の適正供給量に関する検討
  • ・リゾート施設の最低限規模・水準に関する検討
  • ・ビジネス参入ライセンス制の必要性に関する検討
  • ・投資優遇制度と活用ルールに関する検討
  • 不動産取引の管理
  • 不動産取引の履歴記録と不動産所有者情報の整備
  • ・不動産取引による投機的地価高騰を抑制する仕組みに関する検討
  • 人材育成の管理
  • 観光関連の人材育成研修や人材採用面での共同プログラムの検討

  • その他関連する各種の調整機能

④リゾートエリアにおける活動の安全と自由の質を高める機能
 雪崩による事故を防止するための「ニセコルール」は、パウダースノーを満喫する自由と安全を両立させるための、極めてガバナンス(共治)的なシステムとして機能している。しかし、この機能は有志による多大な自主的活動の投入によって辛うじて維持されていることから、より安定的なシステムへの機能強化が望まれており、観光目的税の使途との関連も視野に収めつつ、ガバナンス(共治)機能の強化課題として検討する必要がある。

1−6.「ニセコ観光局」の誘致受入活動における対象細分化戦略


1)誘致受入活動における対象細分化の戦略的位置付け
 多様な地域個性によって成り立つニセコは、リゾート戦略においても多様化を内包することによって、誘致受入において顧客(来訪客)に多様な選択を提供することができる。これは、全体として組み合わせられれば大きな優位性となるが、これまでは全体としての誘致受入戦略が不在であったことから、ニセコの印象も実際の受入環境もバラバラなものにとどまり、国際リゾートの資質としては大きな欠点となっていた。そこで、ニセコを統一した仕組みのなかで誘致活動し客を受入れていく上で、多様性を許容した統一性をどのように戦略化するか、大きな課題となっていた。
 この課題に応えるために設立する「ニセコ観光局」は、多様な地域個性を多様な誘致受入戦略のなかに有機的に位置づけるため、顧客の対象細分化と対象絞り込み及び比較優位の位置取りを中心的な機能とする。

5:「マスタープラン」NPB 2009/「観光客満足度調査」ニセコ町2010/2011

 ①来訪客を有効に細分化する仕組みを組み込む
来訪者へのアンケート調査による対象細分化分析は、これまでも折々に実施されてきた(ニセコ町、NPB)が、今後も定期的に実施する必要がある。また、早急に施設とシステムの構築が求められている「総合案内窓口」や「オンライン予約受付」を利用する顧客のデータは、極めて有意性の高い分析データとなり、有効な活用が期待できる。

②来訪者データを基に、対象細分化、絞り込み、比較優位な位置取りを一貫して分析
 来訪者の属性や行動実態、評価意識などは、誘致受入活動における対象の細分化や絞り
 込み、訴求ポイントの構築などを行う上で極めて有意なデータとなる。

 ③地区の個性に応じた多様な誘致受入戦略を構築する
 受入環境の整備と、対外的なセールス誘致活動のどちらを優先課題とするのか、地区の
 個性と来訪客の実態を組合せて、戦略の選択が可能となる分析結果を提供する。また、
 受入環境整備、誘致活動のいずれにおいても、市場をさらに絞り込むことを可能にする。




2)対象細分化の手法
 来訪客の動態データと意識データは、総合案内窓口、オンライン予約受付、アンケート調査によって定期的に収集できる。この際に必要なデータ項目は、最終的な活用目的に合致する分析結果を想定すると、予め設定可能である。従来の類似調査においても有意な分析結果が得られているので、これらを参考にして調査項目を再検討し体系的に再構築することで、有意義な調査システムの構築が可能となる。右図に、その一連の調査分析活用の反映方法を示す。この一連の対象細分化分析に基づく流れは、ニセコ観光局が、戦略的な誘致受入活動を進める上で、最も中核の位置を占める機能である。

3)対象細分化分析でわかったこと

  • 外国人観光客満足度調査によると、ニセコの成功はリピーターを確保したことによるものであり、来訪時に高い満足度が得られたことが、再訪希望や紹介意向に結びついている。
  • 再訪希望や紹介意向により、顧客自身が誘致活動の実践主体となっているが、現状ではオーストラリアからの来訪客が中心で、欧米やアジアからの来訪客にはまだこの構造が定着していない。
  • したがって、出身国によって誘致活動の優先度は異なり、受入環境と対外誘致活動の優先度を変えることが可能である。
  • 満足度に与える影響度が大きいのは、パウダースノー、自然景観と街並、宿泊施設、食事、費用、情報となっている。

1−7.ニセコエリアの「ブランド形成」に向けて


1)【ニセコブランド】の現状と課題
 「ニセコ観光局」のミッション(使命)を一言で集約すると、ニセコのブランド形成を推進することであり、地域(内部環境)と市場(外部環境)の間を循環しながら、地域と市場の適合性を磨き続けること、と言い換えることが出来る。いわば、ガバナンス(共治)機能もマーケティング(誘致受入)機能も、その成果は全て【ニセコブランド】として表現される。では、ニセコエリアのブランド形成はどんな状況か。


6:「ニセコブランド構築」NPB2008

 パウダースノーは、ニセコが国際リゾート形成の入口に立つ原動力となった最高級の資源であり、世界トップレベルのブランド素材となった。しかし、これはいわば自然発生的に形成されたブランドであり、しかも冬に限定されたブランドである。スキーリゾート先進地のウィスラーなどでは、意識的にスキー以外のシーズンのブランド化も進めており、環境整備や誘致活動においてはもちろんのこと、リゾート全体の成長管理をブランド形成の中核に据えて推進している。ニセコエリアにおいては、このような全般的な取組みがなされていない。このままでは、現状のブランドが強化されないだけでなく、取組み自体の消極的姿勢によって、ブランド力の低下が必至と言える。




2)「フォーカラーズニセコ」(案)のブランド形成が可能
 ニセコエリアは、世界のなかでも四季の特徴が最も明瞭に現れる地域の一つであることは、パウダースノーの品質にも象徴されている。四季によって自然環境が大きく4つの色彩で表現できることから、ニセコエリアのブランドを「フォーカラーズニセコ」とする。
 「フォーカラーズニセコ」は、春の新緑、夏の青い空と川、秋の紅葉、そして冬のパウダースノーなどの四季を表象するが、また、ニセコリゾートエリアを構成する各ゲレンデ地区の多彩な個性をも表象している。花園、グランヒラフ、東山ビレッジ、アンヌプリ、モイワなど、リゾートエリアとしてのあり方そのものも多様である。
 さらに、「フォーカラーズニセコ」は、その基盤が豊かな自然環境と景観にあることから、これらの地域の価値を守り将来に継承することや、これらの自然資源を安全にしかも自由に満喫できるニセコルールの浸透、リゾート開発やさまざまな関連ビジネスにおける市場管理型の地域ガバナンス(共治)などによって、より高い理想を目指すことが出来る。これらのガバナンス(共治)機能に支えられた、受入環境の品質向上に向けた態勢整備や宣伝誘致活動によって、来訪リゾート客の満足度が高められ、再訪率や紹介率が向上して地域と訪問客が協働でブランド形成のパートナーとなる好循環が定着していく。外国人観光客が友人に是非勧めたい推薦率で、ニセコは僅差で白馬を抑え、トップである。

※7:「訪日外客 実態調査」JNTO2007 

 ブランド形成の循環は、まちづくり全体の高品質化に向けてリゾートエリアから両町の全地域空間にその効果が波及していくことを示す、地域内外に向けた大きな指標となる。


ニセコエリアのブランド形成に関する体系的な整理   




1−8.ニセコエリアの受入環境の品質向上を牽引するシンボル事業(案)


1)ニセコエリアの循環バス交通網
 現在、ニセコエリアでは、シャトルバス3路線(花園ヒラフ、ヒラフ倶知安町、ヒラフヒルトンアンヌプリ)、路線バス2社1路線(ヒラフ倶知安町)、そしてデマンドバス(ニセコ町内)が運行されているが、デマンドバスを除くとモイワとニセコ町が路線外となっている。ニセコエリア全体をカバーする路線は、エリアの一体化を可視化する交通インフラとして不可欠である。それぞれ異なる現状のバス運営主体が話し合い、観光局や両町の支援を得て実現することにより、スキーリゾート地区間の自由な移動のみならず、両町の市街地や多様なリクレーション施設の利用も可能となり、両町の経済への波及効果は大きい。また、公共交通網の充実は、ニセコのブランドイメージの向上にも大きく貢献することは間違いない。路線の一体化によって、経営の安定化も可能となるのではないか。

2)ニセコエリア観光案内窓口i(情報)センター
 現在、倶知安町とニセコ町の両市街地にはi(情報)センターがあるものの、最もニーズが高いリゾートエリアには事実上存在せず、充実した情報提供サービス機能の実現は、長年の課題となっていた。多言語スタッフの配置が前提となるが、両町域に複数箇所の案内窓口を設置することは、可視化された情報インフラとして必須である。多言語ガイドの育成機関を兼ねたシステムの拠点として、また来訪客と住民や事業者等のコミュニケーションやホスピタリティの交流の場ともなる。観光局による対象細分化分析に対するデータ供給の機能も託せる。

3)ワンストップWEB予約サイト
 現在、全宿泊事業者、全エリアをカバーするワンストップのWEB予約システムは存在せず、外部機関の予約システムを個々の事業者が独自に利用している。これまでの予約システムのメリットを大きく超える優位性が提供できるシステムを、ニセコエリア全体で構築すべく関係者間の協議を重ね、導入に向けた取組みを可視化する必要がある。エリア全体とさらに両町全域への目的地訪問ツアーの創出にとっても大きな誘因となることから、行政役場も積極的に関与すべきだろう。一定の会費による有料運営を組み込み、また、ニセコ観光局の広報WEBサイト事務局も関与して運営することによって、情報の密な蓄積と運用が観光局運営コスト全体の枠の中で可能になる。また、採算のとれるビジネスモデルが見えてくれば、情報通信産業の拠点としての形成も可能となるだろう。

4)他の受入環境整備メニュー
 ガバナンス(共治)機能と密接に関係する領域であり、具体化検討を深める。

1−9.誘致受入活動の体系


リゾート観光の訪日観光の誘致受入戦略を次の体系に基づいて構築し、実施する。
※8:「地域におけるインバウンド観光マーケティング戦略」NIRA2007



1−10.法定外目的税「リフト税」の導入


1)法定外目的税導入にあたっての留意点
 法定外目的税は、地方行政の財源を安定確保するために課税自主権を行使して創設するもので、地方主権を確立する上で意義ある制度と言える。しかし、徴収対象が地域住民でなく来訪観光客であることから、導入理由や徴収する税の使途などについて説明と議論を尽くすことにより、町民や関係事業者の合意形成を図ることが必要だ。特に、使途については、負担した観光客を含む観光エリア全体が受益できるような、これまでとは異なる新たな政策的事業とする必要がある。また、負担する観光客が他地域の住民であることから、税負担の域外移転や特定の対象者を狙い撃ちにするような課税システムに極力ならないよう、公平性の観点からの配慮も必要だ。
※9:「地方団体における法定外目的税について」知原信良2002




2)東京都の宿泊目的税の導入を参考に
 東京都では、宿泊業を含む観光産業は裾野が広く多くの他産業に経済効果が波及するので、「宿泊税」を観光目的の法定外目的税とすることで、都民にも観光客にも還元できるとの理解を得た(平成14年)。その内容を含めて策定された「産業振興プラン」に対し都内の関係業界も理解を示したことから、制度導入への合意形成が前進した。宿泊税導入後は観光政策財源が増え、観光客も増加している。目的税としての具体的使途は、施設割引入場券、観光案内所の設置、バリアフリー化などとなっている。
※10:「宿泊税5年間の実績と今後のあり方」東京都2007、講演資料「観光振興と法定外目的税について」金振晩2009

3)ニセコエリアにおける法定外目的税「リフト税」の導入に向けて
 リフト税の場合、特別徴収義務者はスキー場のリフト会社となる。関係各社の合意が得られれば、リフト税の導入は実現に向けて前進すると思われる。しかし、リフト利用者に転嫁して徴収することになるので、両町町民の合意と観光客に対する納得いく説明が不可欠となる。リフト税の使途となる新たな観光政策として、たとえば、ニセコルールの安定強化に向けた財源、観光案内窓口の運営に向けた財源、ニセコ全域の循環交通網への財政支援など、ニセコのブランドイメージの向上に結びつき、観光客や住民にも支持される案が想定できる。
 
  
  
 

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2:検討経過


■平成22年度
  8月 9日 ニセコ観光局プロジェクト検討会議発足に向けた意見取りまとめ
          ・関係機関、団体の共通認識と検討協議会の発足について協議
  8月27日 ニセコ観光局プロジェクト検討会議の発足について
          ・ニセコ観光局プロジェクト検討会議設置要綱の検討
  9月12日 溝畑観光庁長官講演会開催・プロジェクト協議会世知要綱制定
 10月14日 ニセコ観光局プロジェクト検討会議(第1回)
          ・首都圏プロモーション報告
          ・当面の検討事項について協議
 12月20日 ニセコ観光局プロジェクト検討会議(第2回)
  • ニセコ観光局プロジェクト検討会議組織態勢の検討
・次年度以降の事業計画について検討

■平成23年度
  6月 1日 ニセコ観光局プロジェクト検討会議(第3回)
          ・ニセコ観光局プロジェクト協議会設立総会議案の審議
          ・平成23年度事業計画案、予算案の検討
  6月 1日 ニセコ観光局プロジェクト協議会設立総会
          ・協議会会則、事務局規定、財務規定について承認、会長他役員を選出
          ・官民一体の組織体制については、2年以内に方向性を示すこととした
  7月14日 ニセコ観光局プロジェクト検討会議(第4回)
          ・組織体制について検討
          ・今年度事業について説明
  8月11日 ニセコ観光局プロジェクト検討会議(第5回)
          ・組織体制について検討
          ・各組織の課題、ニセコエリアとしての課題の検証
  9月21日 ニセコ観光局プロジェクト検討会議(第6回)
          ・組織体制についての検討
          ・今後のスケジュールについて説明
 10月 5日 ニセコ観光局プロジェクト検討会議(第7回)
          ・組織体制についての検討
  • 観光局に何が移行できて、何が残るか、観光局の仕事を考える。
 業務の棚卸しをして、観光局がやるべき仕事の整理が必要
          ・観光客から見ると、ニセコも倶知安もない、と言うのがスタートだった
  • 機能としてどのようなものが必要なのか、
 それをどのように法律に絡めていくのか
           ・観光局のあるべき姿が定まっていない

■平成24年度
  8月 6日 ニセコ観光局プロジェクト協議会総会
          ・平成24年度事業計画案、予算案の検討
          ・これまでの経緯と今後の展開に向けた意見交換会
  8月23日 ニセコ観光局プロジェクト検討会議(第8回)
          ・これまでの経過の振り返り
          ・平成24年度事業計画の進め方に関する検討
  9月20日 ニセコ観光局プロジェクト検討会議(第9回)
          ・平成24年度地域づくり総合交付金事業について
           〜自転車道整備検討調査事業、ニセコ観光局構想策定事業
          ・新観光圏制度について
           〜新観光圏制度の説明、ニセコ観光局構想策定事業、平成25年度VJ事業等
 10月23日 ニセコ観光局プロジェクト検討会議(第10回)
          ・これまでの総括とロードマップについて
          ・ヒアリングと遊佐の結果と論点整理
          ・ブランド観光圏について

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 11月 6日 ニセコ観光局プロジェクト検討会議(第11回)
          ・ニセコリゾートエリアのビジョン
          ・ニセコ観光局設立の目的
          ・ニセコリゾートエリアのブランド


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 11月14日 ニセコ観光局プロジェクト検討会議(第12回)
          ・ニセコリゾートエリアのブランド
          ・ニセコ観光局のミッション、役割分担、ブランドの関係
          ・ニセコ観光局実現に至るロードマップ

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 11月22日 ニセコ観光局プロジェクト検討会議(第13回)
          ・ニセコ観光局のズタッフ、組織形態、財源について


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 11月27日 ニセコ観光局プロジェクト検討会議(第14回)
          ・準備室の仕事、組織形態、スタッフ
          ・財源、法定外目的税


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 12月17日 ニセコ観光局プロジェクト検討会議(第15回)
          ・両町長に対する経過報告と指摘された論点について
          ・今後に向けた課題の整理


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■平成25年度
   3月  5日 ニセコ観光局プロジェクト協議会臨時総会
          ・「ニセコ観光局」の検討に関する中間報告について
          ・「ニセコ観光局」と「ブランド観光圏」について
          ・平成25年度事業(案)について
          ・ほか

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   3月28日 ニセコ観光局プロジェクト検討会議(第16回)
          ・「ニセコ観光局中間報告(あらまし)」ver.4.6改訂承認
          ・今後に向けた課題の整理
          ・ブランド観光圏の取組みについて

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3−1.ニセコ観光局プロジェクト協議会出席者名簿


ニセコ観光局プロジェクト協議会出席者名簿


団体名
職  名
氏名
倶知安町
倶知安町長 【協議会会長】
福島世二
ニセコ町
ニセコ町長 【協議会副会長】
片山健也
ニセコリゾート観光協会
代表取締役
中島日出男
取締役
田中栄一
取締役
下田伸一
企画営業グループマネージャー
加藤淳
倶知安観光協会
会長
本田哲
業務執行理事
渡辺淳子
事務局長
則武新吾
ニセコプロモーションボード
業務執行理事
田中義人
理事
釜江良尚
事務局長
國枝弘二
ニセコ町
商工観光課長
山本契太
商工観光課観光戦略推進係長
小椋将秀
倶知安町
総務部長
関口肇
総務部企画振興課長
文字一志
経済部長
阿部吉一
経済部商工観光課長
福家直人
経済部商工観光課観光振興係長
佐々木勇二
経済部商工観光課観光振興係
彌永幸子
後志総合振興局
産業振興部商工労働観光課観光室長
柿崎仁
産業振興部商工労働観光課観光室主査
本間聖一